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美しの沼

客席より愛を込めて。

その時、初めて見えたもの:中止の記録

いまさらだけど記録として。

2.5次元ダンスライブ「ツキウタ。」ステージ 第二幕 ~月歌奇譚「夢見草」~

初日 桜の章 10月27日木曜日 14時開演

大成功のうちに幕を下ろしたツキステ第二幕だが、その初日公演は一部公演の中止で始まった。

記憶を遡ってみても、停電だったりアクシデントによる公演中断は経験があるけど、中止からの払い戻しは初体験かも。観客、演者、スタッフ、主催、関わってる人間の中に中止にしたい人などいるはずがないので、ここで今更良い悪いを言いたいわけではなくて。

ただ、悲しいことに、これからも絶対に世界中のどこかの劇場で起こりうる「中止」についての記録、そして実際にあの劇場にいた時、驚くほど自分の中の感情がぐるぐるしたことを記録します。

 

時系列(記憶の範囲で)
  • 開演時間5分前にツキラジ*1からスタートすると告知されていたにもかかわらず、14時を過ぎてもスタートしない。
  • 舞台上に舞台監督があらわれ「システム調整」という説明の後、開演が30分近く押して始まる。
  • 芝居がスタートするが途中、明らかに芝居とは関係のないブチっという嫌な音*2と共に以降、音響(BGM、効果音)が止まる。
  • 音響なしで2場ほど芝居は続行したが、日替わりコーナー後、再度芝居が止まる。
  • 音響トラブルのため、再度休憩を挟むとアナウンスされる。
  • 舞台監督が再び板へ、芝居に使う音響システムの復旧の見込みがないため、一部の芝居パートを中止。ライブパートはシステムが別のため、この後、ダンスライブのみ行うことが説明される。(なお皆様へのお詫びも現在、検討中であることも説明)
  • キャストも揃って板に並びお詫び。
  • キャストの衣装チェンジのための休憩後、ダンスライブへ。
  • カーテンコール後、舞台監督が板の上へ(本日3回目)。今回のお詫びについての説明。
  • 退場時に、お詫びの1つのブロマイド(物販購入特典のものをランダムで1枚)と先ほど説明のあったお詫びについての書面が配布される。

 

 

主催の対応:お詫びについて

ニュース|2.5次元ダンスライブ「ツキウタ。」ステージ【ツキステ。】

公演終了時に発表されたお詫びは以下の通り 

  1. チケット代金全額払い戻し
  2. 明日(10/28)以降の当日券の枠より3,000円で提供:ただし、当日券として用意している枠のため(一般販売分は初日前に完売)、10/27夜にインターネットで抽選を行う。
  3. ブロマイド(物販購入特典のもの)をお一人様1枚ずつ進呈

2に関してさらに言えば、17時すぎの公演終了後、18時にはエントリーサイトオープン、24時締め切りで翌日10時には当落が出ていた。私はこのシステムで予定していなかった翌日の公演を観劇。*3

 

これはファンとしてとか、役者の気持ちとかそういうことは完全に抜きに、有料の催しが中止になった後の企業の対応としていうと、完璧な対応としか言いようがない。

芝居パートの中止、ダンスライブ中に協議、お詫び対応の内容を決定し、来場者に配布する書面、当日券枠のエントリーサイトの手配、、公演中止以降は驚くほど見事な采配だった。むしろ、中止決定までは「どうなってるの」と思っていたのだが、その不安な時間との対応の差が妙にリアルで、当然ではあるが誰も中止したかったわけではないこと、決断後は最善を尽くしていることが伝わってきて、企業側の視点も持てるようになってしまった大人は、黙るしかなかった。

 

あの日、あの場所にいた人の問題

中止に限らずだが、こういったトラブルが発生すると、今の世の中、すぐにネットを中心に学級会が開かれちゃのがつらいところ。ここではそれをどうこう言うつもりはなく、あの時、あの劇場にいた人間、ツキステ。の10/27公演にいた人たちは等しく悲しみ、怒る権利はあるよということだけ。

起きてしまった公演中止というトラブルに対して、主催者はベストな対応をしてくれたのは事実だし、板の上に立っていた役者はもちろん誰も悪くない。完璧な対応と、悲しみと悔しさを抱えて板の上に立ち、主催と一緒に謝罪するキャストがいた事実に、その場の大半の人間、そしてそれを聞いた入ってもいなかった人たちまでもが「ライブもしてくれたのに全額返金までしてくれて、何も悪くないのにキャストは謝ってくれたのに、私たち(観客)は怒ってはいけない」という空気ができてしまった。

あの公演しか観れない人もいるかもしれない。あの公演に合わせて地方から遠征してきた人もいるかもしれない。だから怒っていいし悲しんでいい。*4

キャストは悪くない、だけどお金をもらって芝居をする側だったのだから頭を下げる。謝らないでと私も思った。だから、黙っていた。私たちが板の上にいる彼らにできるのは拍手だけだから。

 

そして自分のこと

私は結局、怒らなかった。ましてや、感心すらしてしまったのは前述の通り。でもそれは私が首都圏で暮らしていて、その後の日程のチケットも持っていた上に、結果的に振替の当日券で翌日の夜公演も入ることができたからだ。

しかし、実は「公演中止」が決まるまでの間、私はものすごく怒っていた。あの日、私はどうしても夢見草の初回が観たかったので、仕事を抜けてあの場所にいた(業務上は午後休で夜には戻った)。公演が当初発表されていた2時間半から3時間に延びた段階で、ギリギリになったスケジュールが、開演が30分押した時点でカーテンコールは観れないだろうに変わり、さらに中断と言われた時点でライブは観れるだろうかに変わった。ここまでくると好きな役者が悔しいだろうかとか悲しいだろうかとか関係のない境地になる。

終演後の主催の対応は見事だった。しかし、それがあそこまで完璧な対応でなかった場合、私は主催にクレームをつけていただろうなとも思う。エンターテインメントはサービス業だ。それを改めて感じた約3時間だった。

 

結局、何を語ろうとも、自分は主催ではないので原因はわからないのだけど、元々若手俳優御用達劇場の中だとブルーシアターは音響がよくないところに、今回のトラブルが「音響システム」ということで、音のデータ自体は前日のゲネプロで何も問題はなかったんだし、原因は公演主催ではなく、劇場側にも何かあったりしないのだろうか。今回のようなトラブルが起きた劇場でまたすぐに次の公演を行うわけだから*5、少なくとも関係各所は原因をきちんと解明し、同じことが起きないようにしていただきたいなと思う。

 

 

 

余談:本音と情熱

ここからは更に私の個人的な気持ちの整理。中止がなかったら考えなかっただろうこと。

芝居パートの中止が決まったとき、客席からは「ライブが見れればそれでいいよね」なんて声も確かに聞こえた。なかなかに品のない発言だ。それに対してネット上で怒っているかたがいたのも見かけた。口に出したのは中々にアレだが、実はその発言の一部分だけは「分かる」と思うところもあった。

 ツキステ。第二幕が発表されたとき、凄く嬉しい気持ちと同時に、不安になった。アニメ4話の年中組の「新選組」の舞台から派生した物語、その宣伝内容からすると、本筋はかなりのシリアスになる。いくらパラレルはツキウタの世界では当たり前とは言え、それはツキウタ。およびツキステ。の世界としてアリなのか。疑問や不安は正直、公式からの情報が増えれば増えるほど増した。役者が手を抜くことはないのは分かっている。役者が頑張ろうと頑張るまいとつまらない舞台はある、これまでたくさん見てきた。私はツキウタ。が好きだし、ツキステ。第1幕が好きだけど、それがシリアスなお芝居になるのであれば、また別の舞台演劇になる。好きだからこそ、第二幕が逆転駄作なんてことになったらどうしよう……そんな失礼極まりない心配を初日までずっとしていた。

ダンスライブさえ見れればいい」、あの日あの状況の劇場でよく言えるな、そう思う発言ではあったが、ダンスライブは春よりクオリティが上がることはあってもガッカリさせられることは絶対にない、新曲3曲が加わる期待もあるわけで、私自身、「ダンスライブがあれば(最悪芝居の出来栄えが悪くても)楽しいはず」と内心思っていたところがあった。

あの劇場で耳にした発言が許されるとか擁護をしようというのではなくて。私があの日、あの場所で見たもの、それは役者たちの「芝居パートを見せたかった」という悔しそうな、申し訳なさそうな表情、彼らの真剣な思いだ。

そんなの当たり前だろって思う人の方が多いと思う。だけど、私は彼らの、稽古期間中のPRも含めた営業の表情とは違う、本物のあの表情を観て、中止は残念だったけど、早く芝居パートが観たい!公演が始まる前より何倍もツキステ。第二幕が楽しみになった。芝居の質が読めないからライブパートのツキノウタを心の支えにしていたのに、ライブパートが始まる直前、今は仕方ないけど早く芝居を最後まで観せて欲しいという気持ちに支配された。(ので、翌日の当日券に申し込みをした)

どこか異様な空気で始まったライプパート。最初は自分の中で芝居パートへの意識が変わったこともあって、どう盛り上がっていいのか分からなかった。彼ら自身が客席の空気をどう思ったのか分からないが、先ほどまでの表情とはうって変わって完璧なアイドルの笑顔を見せて、私たちを楽しませてくれた。顔は確かに笑顔なのに、鬼気迫るようなダンスだったようにも思え、それにまた胸を打たれた。

終演後に皆が思ったのは「(芝居なんてなくても)ダンスライブがあればいい」ではなくて、「芝居は見れなくて残念だったが芝居の分のエネルギーも注いだダンスライブが見れて良かった」という拍手だったと思う。(全員がそう思ったかは分からないけども)

 

彼らの初日後、また千秋楽後のブログやTwitterを読んだ。

中止になって良かったことなんてない。だけど、私が大好きな舞台の大好きな役者たちの真剣な気持ちが見えた。そんな事件だった。

*1:ツキステ。特有の前説コーナー

*2:コードを無理に抜いたような音

*3:ちなみに席は「なるほど当日券」というべき、機材ブース付近、後列のセンター

*4:もちろんその怒り悲しみを誰に、いつまでぶつけるかというのはまた一つの問題だけれど、少なくとも文句を言っちゃいけないなんてことはない

*5:第3幕のグラビ公演はブルーシアターでの上演が決定済み